英語脳は存在しない

英語学習は英語脳を獲得する事だと書いている英語教育者や英語学習者が多いのですが、本当に英語脳は存在するのでしょうか。
科学的な事実を調べてみます。

1.英語脳とは

“英語脳”を検索すると多くの英語教材や本を書いた業者の名前がでてきます。残念ながら英語脳は業者にとっては大変に都合の良い考えなのです。英語脳は“水素水”のように煙に巻くには非常に都合が良い言葉なのです。

水素水の効果は判明しておりません。しかし、水に水素が入っていると何か効果がありそうな感じがして、水素が入っているだけで、その効果の根拠のなく、健康に良いと言うだけで水素水を売っているのです。

英語脳も存在の根拠がないまま、英語脳があると英語を話せるような気になり、その英語脳の獲得方法だけが商売の対象となっています。科学的な表現をしながら、非常に非科学的な説明なのです。

2.科学雑誌「Nature」で発表

次のように発表されました。

“1997年に科学雑誌「Nature」に発表された論文によると、高校生以降に第二言語として英語を習得した人の脳を調べた結果、母語(日本人の場合は日本語)を使用するときと英語を使用するときでは脳の別の領域が活動するという実験結果が出たのだ。

また、新潟大学脳研究所教授の中田氏の実験では、日本人が日本語を使っているときと、アメリカ人が英語を使っているときでそれぞれ脳の活動がはっきりと違ったそうだ。東京大学大学院神経生理学准教授の池谷氏は、その理由として、「日本語と英語の持つ音韻や文法構造の違い」などが考えられるとしている。日本語脳と英語脳が存在する科学的な証拠である。“

アメリカのハーシュらによるfMRIの実験では、幼少の時からバイリンガルで育った群と、10歳頃から第二言語を習得した群とを比較して、後者の群でのみ、2つの言語による活動領域がブローカ野の中で分かれていることが報告されています(Kim et al., 1997)。しかし、その後この結果を再現する報告はなされていません。また、第二言語を習得した時期や習熟度が違っても、ブローカ野の活動に差が見られなかったという実験結果や、習得時期が遅い方がブローカ野の活動が強まるという報告が現れて、母語と第二言語におけるブローカ野の役割は不明な点が多く残されていました。

また fMRI の欠点としてはアーチファクトに弱いことがあげられます。これは 脳賦活に伴う信号変化が数%に過ぎず,数百枚の 画像を統計処理することも原因の一つです。

アーチファクトとは、「人工産物」という意味で、ノイズともいい、fMRIや心電図等の電子機器に混入する他の現象を総称したものです。

英語脳が存在すると言う結果が再現されていないだけでなく、アーチファクトが多く発生するfMRIと言う機器で研究した結果も問題です。

3.浜松医科大学の植村氏の発表

英語脳は最初から非科学的であったのではありません。最初は何か科学的な感じがしていました。それは浜松医科大学の植村研一氏が、アメリカのバイリンガルになった大学生と、東大生で英会話が出来ない大学生2人に英語と日本語のニュースを交互に聞かせ、そのときの脳内の反応を調べる実験があったからです。更にこれは1999年10月19日のNHKのクローズアップ現代でも放映されました。

“どうすれば英語が話せるか”という番組が放送されました。そのなかで植村浜松医科大学名誉教授は大脳生理学の「ウエルニッケ言語野」ご研究の成果である大脳のスキャン写真を基に、「英語を上手に話せる人」と「そうでない人」との違いを説明しています。

英語を上手に話せる人は、英語を話す時は、日本語とは違う言語野で処理しています。「そうでない人」は、英語を話す時も日本語と同じ言語野で処理しています。

 

この番組のなかで、グレゴリー・クラーク多摩大学名誉学長は、言語野をコンピュータにたとえて、このことを、「英語を上手に話す人」は、頭のなかに、英語の言語コンピュータと、日本語の言語コンピュータと二つ持っていると説明しています。

「そうでない人」は、大脳に、日本語の言語コンピュータ一つしかなくいちいち、英文和訳、和文英訳をしています。だから英語を上手に話せないのであると語っています。

植村教授もクラーク学長も、「英語を上手に話す」ためには、英語のウエルニッケ言語野つまり英語の言語コンピュータである英語脳を大脳の中に、新しく創ることが必要であると説明しています。

そうして、英語のウエルニッケ言語野つまり英語の言語コンピュータである英語脳を、大脳のなかに新しく創りあげるには、毎日、英語ヒアリングを続けることだと力説されています。

英語脳獲得できるという教材の説明には次のような記述があります。

4.英語脳の作り方

ステップ・バイ・ステップのトレーニングが必要であると思う。

従って、毎日、英語ヒアリングに加えて、

毎日、コピー(複写)英作文と、

毎日、英語高速音読が必要であると思う。

 

しかし、これらの英語学習は基本的には覚える学習であり、記憶量を増やす学習であって、この学習によって英語脳が作られると言う科学的な根拠はまったくありません。

英語学習により脳に記憶されるのは英語脳と言う特殊な部分ではなく、脳のネットワークに長期記憶として保存されているに過ぎません。

5.英語脳は存在ない

しかし、現在では上記の植村氏の英語脳の論文はもう検索できません。英語脳を植村氏の研究を引用しているのはもう業者だけになってしまいました。英語脳は最初からインチキを書いた訳ではなく、科学的の進歩により英語脳の存在が証明できなくなりました

植村氏が自分の研究を取り下げたのは本人は何も言っておりませんが、英語脳が存在すると言うは正しくないと認めてものと思われます。英語脳はと言う単語は日本語や英語の辞書にも掲載されておりません。英語でも英語脳に当たる単語は存在しません。

なんと英国人は英語脳の事を知りません。モンゴル人はジンギスカンと言う料理を、北欧の人はバイキングと言う料理を知りません。それは英語脳も、ジンギスカンと言う料理もバイキングと言う料理も日本人が勝手に作り上げているからです。

最近では脳の学習メカニズムもかなり解明されました。そして脳のニューラルネットワークは人工的にも再現され、ディープラーニングと言う学習方法も人工知能で再現されています。

6.ニューラルネットワーク

脳は全体的にニューラルネットワークですから、全体がつながっており日本語脳や英語脳の部分的な区分けはできません

英語脳は英語の辞書にも、解剖学にも、日本語の辞書にもありません。英語脳の用語を使うのは教材販売の業者だけです。また五感のセンサー来る脳の処理は全部同じであり、同じ言語の英語と日本語が別に処理されるはずはありません。

脳には、ある脳細胞がダメージを受けても、他の脳の部分代わって機能を担う働きがあります。つまり英語脳がダメージを受けても、日本語脳が英語脳にもなる事ができます。

上記の植村氏の実験で英語脳が見えたのは脳の表面の活性度を見たからだと思います。脳の中では同じ部位が表面的な活性度にばらつきがあり、あたかも脳の2つの違う部位が活性化したように見えたのです。それを英語脳と呼んだものと思われます。

 

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