第二言語習得における自己調整の研究は、言語習得に効率的な学習方法に焦点を当てた「学習ストラテジー」の研究の流れから発展してきました。
この発展の背景には、 どの学習者にも効果的であるとする普遍的な言語学習方法というのは存在せず、学習者自身 が学習に従事できるように学習を調整する過程が重要であるという考えによります。
現在は、自己調整に焦点を当てた研究の流れがありますが、実際の研究の数は 非常に限られています。
第二言語習得は学際的な分野であるため、様々な領域からの研究の応用が試みられています。 教育学や心理学での研究の応用が非常に有名であります。
やり抜く力とセルフ・コント ロールの研究は、近年心理学の分野で発展してきていますが、第二言語習得への応用研究はほとんど行われていません。
この研究の中でやり抜く力と第二言語における理想自己が含まれています。このような比較研究によって、両領域における概念の関係性を明確にすることが可能となります。
Duckworthは、達成に向けての過程を次の二つの方程式で説明しています。
才能×努力=スキル
スキル×努力=達成
才能は、スキルが上達する速さにおいて重要だが、それ以上に達成には努力が2回影響することから、大きな達成を得るためには努力が必要ということが分かります。
朗報として、努力はかなり融通の利くもので、意識的に調整できる。そのため、努力できるように人を動機づける方法が求められます。ただし、努力においては、ただ「一生懸命頑張る」だけで は十分ではありません。
その活動を「やり抜く」こと、つまり持続性が必要となります。そして活動の持続によって本当の達成が可能になります。特に重要な二つの概念「やり抜く力」と「セ ルフ・コントロール力」は、言語習得への努力を維持するための重要なカギとなります。
Duckworth and Seligmanは次のように述べています:
アメリカの青少年における学業不振の原因については、能力の低い教師や、退屈な教科書や、クラスの生徒数などがよく非難の的になっています。しかし、生徒が自らの知的潜在能力を十分に伸ばせない別の理由があります。
それは、生徒たちが 自制心を働かせることができないからです。数多くのアメリカの子どもが、長期的な利益のために短期的な娯楽を犠牲にすることを強いる選択をすることに困難を抱えていると思われます。
特にシニア英会話のシニアという方々に目をつけたのは英語を学びたいと思われる方は、このやり抜く力とセルフ・コントロールが上手な方であると思われるからです。
シニアになって英語をやりたい方は非認知能力に優れた方が多いのです。
自制心を強化するプログラムこそ、学業的達成を高めるための王道であると思われます。
これらの研究においてはそれらがアメリカの状況について述べていますが、同じことが日本をも含む多くの先進国にも当てはまると思います。
有能な教育者の育成、より魅力あります教材の開発、適切な学習環境の整備と いった学習者の外的要因を整備することは非常に重要です。
それとともに、学習者自身の内からの力、目標、そして目標に向かってやり抜く力と自分をコントロールする力を培うように学習者自身を 教育することが、今後の言語学習の大きな課題であります。